秋葉原発、冥土行き

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 大通りをしばし真っすぐに進み、途中で向かって左側にやや狭い道に入る。それから角を曲がり、やや人通りの少ない道を進む。  左側の高台に神社らしき屋根が見える道を少し行くと、小さな雑居ビルが並んでいて、その中の一つにヒミコが入って行く。トモエも後に続く。  エレベーターで3階の上がって狭い踊り場に出た。すぐ横にドアが一つだけあり、ヒミコがドアを開け中に入った。 「こんにちわ、ホワイト・リズムです。お届け物持って来ましたで」  すぐに同じ制服の若い女性が3人駆け寄って来た。 「あ、ヒミコさん。良かった、開店前に届いて」 「中身確認しておくれやす。トモエはん、その箱をお渡しして」  トモエが段ボール箱を手渡す。店の内装と彼女たちの服装を見回しながら、トモエは目を丸くした。  彼女たちの制服は薄い水色のミニスカートのワンピースで、その上に白いレース付きのエプロンを重ねている。いわゆるエプロンドレスという物らしい。  床には深紅の絨毯が敷かれ、壁も天井も漆黒だった。ドアを背にして右側に二人ないし4人掛けのクラシック調のテーブルと椅子が並び、左側はカウンター席になっていた。  壁のあちこちに掛けてある小さめの額縁の中の絵を見て、トモエはふとつぶやいた。 「不思議の国のアリス?」  側にいた制服の女性がうれしそうに気を上げた。 「あ、分かりました? ここは不思議の国のアリスの世界っていうコンセプトの店なんですよ。カンムリティアラって言います」  トモエは3人の制服の女性たちをかわるがわる見つめた。 「ええと、じゃあ、みなさんはアリス?」 「そうそう。この制服着てる女の子はみんな不思議の国のアリスって設定なんです。そしてお客さん方は、ワンダーランドにやって来た旅人さん」 「へええ!」
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