秋葉原発、冥土行き

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 店の奥のカーテンが開いて、違う服装の短髪の女性が出て来た。ヒミコに一礼して言う。 「ありがと、ヒミコさん、助かったよ。昨日からの東北の大雪でトラックが予定通りに到着しないんだ。その商品の在庫が切れちゃってるのに補充できなくて、どうしようかと思ってたんだ」  彼女はトモエに気づいて慌てて会釈した。 「あれ、初めて見る方ですよね? 新入社員さん?」  ヒミコが変わってその場を取り繕った。 「ああ、就職先探しに東京に来た子でな。今日はうちの会社の見学ちゅうとこや」  トモエは物珍しそうに短髪の女性の服装を眺めた。白いワイシャツに赤い模様の入ったベスト、その上に黒い上着と黒いパンツ。中世の男性貴族のような古めかしいデザインだが、これも演出なのだろう。トモエの視線に気づいた女性が説明した。 「この服はキッチンスタッフ用なんですよ。ホール係のあの子たちがアリス、僕らキッチンスタッフは帽子屋さんって呼んで下さい」  アリス姿の女性の一人が段ボール箱の中から包みを取り出しながらヒミコに言った。 「あのう、ヒミコさん。疑うわけじゃないんですけど、これ試してみていいですか? ちゃんと膨らむかどうか」  ヒミコはうなずきながら答えた。 「むしろ試した方がいいですやろ。長い事倉庫に眠っとったみたいやから」  アリス姿の女性は今度はトモエに言った。 「じゃあ、あなた、ちょっと手伝ってくれる? そこのテーブルに座ってくれるだけでいいから」  トモエは何がなんだかわからないまま、近くのテーブルの椅子に腰かけさせられた。アリス姿の3人がトモエを囲むようにして立つ。  トモエの前に小さな白い陶器の皿が置かれ、その上に白い円盤状の物が乗せられた。アリスの一人が小さなポットを手にして言った。 「では、これから、不思議の国への入国の儀式をします。さあ、魔法をかけますよ」  そう言ってポットからちょろちょろとお湯を、その白い小さな円盤に注ぐ。百円玉ほどの直系のその白い円盤が、まるで早送りのキノコの成長記録映像のように、縦にむくむくと伸びた。 「え? な、何ですか、これ?」  トモエは驚いて目の前の白い円盤転じて円柱を見つめた。
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