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三月一日 アンズ(杏子)
拝啓
お誕生日おめでとう
愛くるしい君のはにかみの前に僕はな
んにも抵抗できない。お手上げとはこのことだ。だから
ずっと一緒にいてくれと僕は君に請う。
敬具
三月一日、
僕はその手紙に封をして机の中へとしまった。
彼女が去年僕の庭で採れた杏子のジャムを持って
家に来てくれるからだ。
今年も僕の庭ではまだ杏子の花は咲いていない。
だけど、冬の風が立ち去る頃白い花が咲くだろう。
家族にからかわれながら
僕の焼いたパンと彼女の作った杏子のジャムで
昼食を楽しむ予定だ。
彼女は喜んでくれるだろうか。
うちの家族が僕の子供時代の悪童っぷりを
披露しないことを願うばかりだ。
はにかんだ笑顔の君に捧げよう杏子の花の首飾りを
了
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