三月一日 アンズ(杏子)

1/1
前へ
/31ページ
次へ

三月一日 アンズ(杏子)

拝啓 お誕生日おめでとう 愛くるしい君のはにかみの前に僕はな んにも抵抗できない。お手上げとはこのことだ。だから ずっと一緒にいてくれと僕は君に請う。                  敬具 三月一日、 僕はその手紙に封をして机の中へとしまった。 彼女が去年僕の庭で採れた杏子のジャムを持って 家に来てくれるからだ。 今年も僕の庭ではまだ杏子の花は咲いていない。 だけど、冬の風が立ち去る頃白い花が咲くだろう。 家族にからかわれながら 僕の焼いたパンと彼女の作った杏子のジャムで 昼食を楽しむ予定だ。 彼女は喜んでくれるだろうか。 うちの家族が僕の子供時代の悪童っぷりを 披露しないことを願うばかりだ。 はにかんだ笑顔の君に捧げよう杏子の花の首飾りを 了
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加