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老いていく度に、身体はいう事をきいてくれなくなります。
60代から70代前半の頃は何とか仕事する事ができましたが、それ以降はキツくなり、年金生活になりました。
ご近所さんにお世話になりながら、両親と過ごした実家で生活していました。
そうこうしているうちに、私はいつの間にか100歳を迎えました。町から記念品と賞状を貰い、広報誌にも載せてもらいました。
自分が思ったより生きてしまったなと思った時、オマエハクルナという娘の声がしました。オマエナンテ、エイエンニイキロ。
それから暫くして、私は病気で入院しました。闘病生活は長く、私はもう自宅に帰れないだろうと思いました。入院して10年、治りもせず、死にもせずの生活が続きました。そのうち貯金が尽き、治療費が払えなくなった私は自宅に戻されました。
ご近所さんは居なくなってました。この10年でみんな、亡くなったり引っ越したりした様です。
病院のスタッフさんに敷いてもらった布団に寝かされると、みなさんは帰り、独りぼっちになりました。きっと私はこのまま死んでゆくのでしょう。そう思ってました。
眠る度に身体は死に近付き、夢を見ます。
娘と元主人が楽しく会話をしています。
そこに私も加わろうとすると、拒絶されます。オマエハクルナと。
そこでいつも目が覚め、私は自分に言い聞かせます。いや、違うわ。あの子はお姫様じゃない。サエという他人よ。
時が過ぎ、病が身体を蝕み、私の身体はどんどん腐っていきます。蝿が私の周囲を飛び回り、蛆が身体のあちこちから沸き出し、ゴキブリも体内を走り回っています。
なのに、私は死ねません。腐った身体に魂が留まったままです。気持ち悪くて仕方ありませんが、死にたいと願う度に、娘の声が聞こえます。オマエハクルナと。
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