始まり

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始まり

「ここ……だよね?」 私はとあるビルを見上げてぽつりとこぼした。 手の中の手紙に書かれた住所とビル名を照らし合わせる。間違いなく目的の建物だ。 十階建てのその中に、恐る恐る足を踏み入れる。 一階はいたってシンプル。エレベーターの横に内線用のスマホが壁にかけられ て鎮座していた。 「えっと、内線四四四番、と」 番号を押して少し離れる。数回コールが鳴った後、ガチャリと誰かが電話に出た。 『はーい、どちらさん?』 明らかにやる気のなさそうな、のんびりした声が響いた。 「あっ、あの、明石灯(あかしともり)と申します! お手紙をいただいてきたのですが……」 『あー……。あ? 明石さん!?』 ガタンと騒々しく音がした。椅子か何かを蹴倒したらしい。 『ごめんね、ええと、横のエレベーターで八階まで上がってきてもらってもいいかな?』 「は、はい」 それじゃあ待ってる! と言い残して通話が切れた。 エレベーターに乗り込んで八階のボタンを押す。
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