5人が本棚に入れています
本棚に追加
始まり
「ここ……だよね?」
私はとあるビルを見上げてぽつりとこぼした。
手の中の手紙に書かれた住所とビル名を照らし合わせる。間違いなく目的の建物だ。
十階建てのその中に、恐る恐る足を踏み入れる。
一階はいたってシンプル。エレベーターの横に内線用のスマホが壁にかけられ
て鎮座していた。
「えっと、内線四四四番、と」
番号を押して少し離れる。数回コールが鳴った後、ガチャリと誰かが電話に出た。
『はーい、どちらさん?』
明らかにやる気のなさそうな、のんびりした声が響いた。
「あっ、あの、明石灯と申します! お手紙をいただいてきたのですが……」
『あー……。あ? 明石さん!?』
ガタンと騒々しく音がした。椅子か何かを蹴倒したらしい。
『ごめんね、ええと、横のエレベーターで八階まで上がってきてもらってもいいかな?』
「は、はい」
それじゃあ待ってる! と言い残して通話が切れた。
エレベーターに乗り込んで八階のボタンを押す。
最初のコメントを投稿しよう!