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運命の動き
最初は楽しかった専門学校生活だったが、早くも疲れが出てきた。
「声優になるのってすげー難しいんだなー」
「なんか想像していたのと違うわ」
そう言って数人やめていった。
講師曰く「珍しいことではない」とのこと。
まあ、受かった高校や大学も一度も行かずにやめる人もいるんだ。
専門学校だってそうだろう。
しかし、俺も挫けそうになっているのも事実だ。
どんなに口で覚悟ありますと言っても、実際にやると現実の厳しさみたいなものを味わう。
そんなこと中学生になったときも高校生になったときもあったことであったのをなぜ、忘れてしまうのだろう。
毎回「次こそ変わる」と思えてしまう。
事実周りにいる人間、環境は変わった。
俺にも同じ夢を目指す友達が出来た。
「卒業してもなるまでは絶対に諦めないからな!」
と、熱く語る『中西カズマ』は常に誰よりも前に出ていた。
元々、演劇部であることもあってか誰よりも早く稽古場に来て、誰よりも早くセリフを覚えた。
「俺は勝山に見どころを感じている」
偶然、早めに来て二人きりのときに中西は言ってきた。
「えーと、ありがとう」
「お前には他のやつとは違うものを感じるんだ。お前の芝居には迷いがない」
「そうなのか?」
「自分では気が付いてないかもしれないが、潜在的能力がある。俺が保証する」
ここまで自信があるやつに褒められると素直に嬉しいな。
「へぇーその中西って人良い人じゃん」
「ああ。同じクラスだから話すけど初めてまともに話をした気がする」
俺はタケシの家に遊びに行ったときにその出来事を話した。
「芝居かー話聞いてると俺もやってみたくなってくるな」
「やってみたらどうだ?」
「どうやって? 今さら、演劇サークルに入るには抵抗あるし」
「ワークショップっていう初心から上級者まで教えてくれる教室みたいなのが定期的に開かれているんだ。毎日どこかしらではやっているんだ」
「あ、聞いたことあるな。ワークショップって芝居以外にもあるんだよな」
「俺も参加するから一緒に芝居してみないか?」
「そうだな。勉強ばかりで少しは気分転換になるかもしれないな」
俺はタケシを誘ったことで自分たちの運命が大きく動くことをこのときは考えてもいなかった。
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