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「美しいな……」
陽翔は花々を見つめながら、黄昏れていた。
「まるで……」
芳翠は言いかけてすぐに口をつぐむ。
「いや、いい。お前の言いたいことはわかる。きっと桃艶が居るかのようだ……じゃないのか?」
陽翔は、悲しく微笑んだ。
「申し訳ありません。こんな祝の席で……」
芳翠は深々と頭を下げた。
「いいんだ。私も同じことを考えてたからな」
「陽翔様……」
「この花々は桃艶が好きだったものだ。思い出さない方がおかしいよ」
花は、生き生きと咲き誇っている。桃艶の死を否定するかのように。
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