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雅美が部屋に入ると電気がつく、気配を察知して様々なことが出来てしまうマンションは、面倒くさいことが嫌いな結人のセレクトだ。
芸能人になってからストーカーや追っかけ被害に合わないように部屋の中までオートロック仕様になっている。
学生寮のときでも部屋の中に部屋があるという特殊な空間で過ごしてきた結人ではあったが、ここまでする?って言いたくなるような作りが至るところに組み込まれている。
室内の温度や湿度も常に快適な温度で設定されているので、部屋に入ってすぐでも寒さや暑さを感じなくてすむのだ。
でも今日はなぜか酷く寒く感じられた。
雅美は部屋着を1枚羽織るとベッドサイドのソファーに腰掛けた。
そしてテーブルの上の卒業式に二人で撮った写真をじっと見つめた。
「結人。。」
呟いたらなぜだか苦しくなって切なくなって涙が溢れ落ちた。
隣の部屋にいるのに近くにいるのに、心は遠く離れている気がして苦しくてたまらない。
まるで自分だけが結人に片思いしているかのように。
雅美は写真の中の結人にそっと口付ける。
「冷たい、冷たいよ結人」
無機質で熱を持たない写真の中の結人、きっと同じようにファンの子達もしてるであろう。
ただ雅美は知っている。
結人のぬくもり、熱、強引なまでの激しさ。
知っているからこそ余計にせつなくなるのだ。
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