きもちはいつもかくれんぼ

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広告会社のコンサルタントである柴さんが、当社に定期訪問するようになっておよそ一年半。 私の秘めた恋心なんて彼が気づく気配すらなくて。 ただの取引先の受付嬢としか思われてないことに胸がきゅっと苦しくなる。 (柴さんは私の名前すら知らないかも……) これまで名前を呼ばれたことなんて一度もなくて、いつも彼が呼ぶのはマーケティング部の服田さんか同期の水瀬くんだけ。 後輩だけどしっかり者でハキハキしている服田さんは、いつも明るい笑顔で社内でも人気が高い。 営業スマイルが張り付いてしまっている私とは、大違い。 柴さんも服田さんみたいな子の方が好みなんだろうな、なんて。勝手に落ち込んで、後輩にさえ嫉妬してしまう醜い自分が嫌になる。 いっその事、同期の水瀬くんに打ち明けてしまおうかな。 そんなことを思いついたこともあったけれど、相談したところでこの恋が実るとは到底思えなくて、ただでさえ他人行儀な仲なのにもっと距離を取られることに怖気付いて、結局誰にも言えずにいる。 気まずい関係になるよりは、何もない今の関係の方がマシだった。 服田さんとは仕事で話すだけだから。 会社としての取引だから。 そうわかっていても名前を呼ばれることさえ羨ましくて、一緒に会議室に向かう後ろ姿を見つめながら嫉妬してしまう。 あーあ、この恋心が消えてしまう魔法でもあればいいのに。 そうすれば、胸の奥からうずうずと湧いてくる痛みも何もかも消してしまえるのに。
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