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きもちはいつもかくれんぼ
「服田さんを呼んでいただけますか」
低くて落ち着いたその声が、誰のものかすぐにわかるようになったのはいつからだろう。
月末が近づくと、取引先の彼が打ち合わせのためにやってくる。
会議室の予約を見つける度に、やけに心臓がうるさくなって、そわそわと数日前から落ち着かなくなる。
ぽわっと火照る頬を両手で隠しながら、にやけるのを我慢するのに必死なときもあった。
顔を見れるのも、声を聞けるのも、ひと月にたったの一度だけ。
交わした会話も数え切れるほどの回数しかないけれど、気づいたら恋に落ちていた。
知っているのは、勤務先と名前だけ。
誰にも言えない秘密の恋だった。
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