14/21
前へ
/659ページ
次へ
『嫌だ』 そう言ってその手を振りほどいてしまうのは簡単だ。 でも、この場でそれをするのは利口じゃない。 とっさにその考えが頭を過(よぎ)り、私は黙って俯いた。 「綾野くんの思ってるようなこと、ないから。 ──西嶋さんに、謝って」 絞り出すようにした言葉は、微かに震えた。 「謝るようなこと言ってねえし」 「西嶋さんは彼女だっているのに、失礼だよ」 私がそう言うと、綾野くんは静かになった
/659ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4734人が本棚に入れています
本棚に追加