4734人が本棚に入れています
本棚に追加
『嫌だ』
そう言ってその手を振りほどいてしまうのは簡単だ。
でも、この場でそれをするのは利口じゃない。
とっさにその考えが頭を過(よぎ)り、私は黙って俯いた。
「綾野くんの思ってるようなこと、ないから。
──西嶋さんに、謝って」
絞り出すようにした言葉は、微かに震えた。
「謝るようなこと言ってねえし」
「西嶋さんは彼女だっているのに、失礼だよ」
私がそう言うと、綾野くんは静かになった
最初のコメントを投稿しよう!