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 そのひと月後にロドリゲス様はお亡くなりになった。  嫁ぐ時とは違う顔を覆う黒いヴェール越しに物言わぬロドリゲス様の唇にそっと唇を重ねる。  これは初めてのキスとも言えない、感謝とお別れの気持ち、旅立っていく家族への愛。  僕もあなたの傍にいられて幸せでしたよ。どうかあなたも天国で愛する人と再会を果たし、ずっとずっと幸せでありますように――。 *****  ロドリゲス様を見送り、しばらくして僕は実家へと帰された。  少なくはない相続分も全てをお父様にお渡しした。  僕には必要がない物だったし、僕は再びケインに会える事の方が重要だった。  ケインを探し、駆け寄る。  ケインは少しだけ戸惑っているように見えたけど、すぐにいつもみたいに笑ってくれた。 「ただいま」 「坊ちゃん、お帰りなさいませ」  ああ、僕のケイン。  再び会えただけで僕の心は喜び震えていた。  この時彼が何を考えていたのか――、僕はいつも自分の事ばかりだった。
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