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オッサンがオヤジギャグ言ってもそれはただの
ギャグだよなって思いながら、けらけら笑う。雅也さんには私を笑かす不思議な魅力がある。まあ、シラフの時はどうかわかんないけど。
「まあ、飲んでみなって。意外と味わい深いから」と勧められるがまま、ひと口飲んでみた。甘やかな香りが鼻に通っていく。口触りもいい。
「意外といいかも」
「でしょ。ちょいワル親父の環希ちゃんにはピッタリ」
「なんだとう」
さっきからこんなに可愛い女子をオッサンに仕立て上げようとしてくる雅也さんを睨む。でも昔から雅也さんはどこ吹く風で全く気にも留めない。だからこそ心地いい。そう、あの頃は——
「ちゃーっす。迎えにきましたー」
入り口から聞こえた声に耳が跳ねる。視線を送ると黒色のマウンテンパーカーに黒スキニーというなんとも月並みバンドマンあるあるな格好の男がのろりと立っていた。
雅也さんは笑顔で「淳平、いらっしゃい」と声をかけると、背中に背負ったギターケースの先を揺らしながら、彼は私の元へやってきた。
「うわ、めっちゃ酔ってる」
「ふふふ、セクシーでしょ」
「やべえ。雅也さん飲ませ過ぎだから」
「ウチも経営厳しくてさあ」
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