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でもまあ、バンドなんてそんなもん。解散する理由として音楽性の違いってよく言うけど、つまりはそういうこと。一人じゃ出来ないからバンドなんだし、バンドを組む以上その色に染まるしかない。かく言う私も同じような理由で解散してしまった内の一人なわけだけど。
いっそのこと淳平がフロントマンをやったらいいんじゃない? というオバさんのお小言は胸に留めて、しばらく可愛い後輩と音楽談義に花を咲かせる。
「環希さん飲み終わりましたね。じゃあ帰りますよ」
「うーん、あと一杯」
「ダメっす」
「うるせえ。雅也さん、ちょいわるろっく一杯」
「ああ、もう品切れだな」
まだ半分以上残ってるブラックニッカのボトルを目の前にして、平然とそんなことを言う雅也さんに口を突き出して文句を垂れる。淳平は隣でビールを一気に飲み干して、席を立つ。味方のいなくなった私は渋々立ち上がった。
「淳平、環希ちゃんよろしくな」
「うっす」
「いやーん。連れて帰られちゃうー」
淳平が白い目で見ていたかどうか定かではないけど、私の軽口を無視して先に外に出て行ってしまったから、仕方なく私はふわふわした心地のまま、淳平の後を追うように雅也さんの店『ラババン』を後にした。
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