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卒業の日。
制服姿の君は卒業証書を持って堂々とこちらに向かって歩いてきた。
「わたし高校を卒業したよ」
君は僕を見上げてにっこりと笑い卒業証書を見せてくれた。僕はおめでとうと心の声で伝えた。
「それから、わたし漫画を投稿したよ。結果は分からないけど楽しく描いたよ。小説を書いてる主人公の桜川桜子の姿を生き生きと描けたと思うんだ」
僕は心の底からおめでとうと君に言いたい。
「それとね、前川夢真の桜の花びらを髪の毛にくっつけている姿も楽しみながら描いたよ。前向きに小説を書く桜川桜子とそんな桜子をのほほんと応援する前川夢真を描いて良かった。この二人はきっとうまくいくはずなんだ」
そう言って微笑みを浮かべる君の姿は美しかった。君ならこの先の人生も前を向いて歩いて行けるね。
「わたしの話を聞いてくれてありがとう」
君は僕を見上げて言った。
こちらこそ君と出逢えて幸せだったよ。ありがとう。この先の人生で僕のことを思い出したら会いに来てね。
僕はいつでもこの川沿いの道にいるよ。
「高校は卒業したけどまた、会いに来るね」
君は卒業証書を片手に持ち僕に手を振った。桜の花びらがさらさら舞う中君の後ろ姿が小さくなっていく。
君は今日高校とそれから僕から卒業した。
また、いつか会う日まで僕も君から卒業するよ。卒業おめでとう。心から君の幸せを願っている。
「完」
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