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それからしばらくしたある日。
「夢があるって幸せだね。今、わたしは桜川桜子と前川夢真が主人公の漫画を描いているんだよ! わたし中吉 麻亜里にしか描けない漫画を描くからね」
君は鼻の穴を膨らませやる気満々で僕に語りかけた。
そんな君のこと見ていると僕にも元気なエネルギーがぐんぐんと湧いてくる。頑張っている君のことを応援しようと思った。
僕は桜の花びらを風に乗せてさらさらと舞わせ君の元へ運び君を桜色に染めた。
「わぁ~綺麗だね。表紙は桜の木にしようかな」
君は桜の花びらを両手いっぱいに掬った。僕からするとそんな君がまるで物語の主人公に見えた。
夢見る君の応援ができて僕はとても嬉しかったのだけど。
ある日の君はしょんぼりと俯き涙をぽろぽろとこぼした。どうしたのかなと僕は君のことが心配になった。
「……やっぱりわたしには才能がないのかな?」
そう呟いた君の瞳から涙がぽたぽたと零れ落ちた。水彩用紙に描いた桜の花びらが君の涙で滲んだ。
そんな君を見ることはとても辛くて悲しい気持ちでいっぱいになった。
君は大丈夫だよと僕は伝えたくて、君の涙で滲んだ水彩用紙に描かれた桜の花びらにさらさらと僕の桜の花びらを舞い降ろした。
すると、君はじっと舞い降りてきた桜の花びらを眺めやがて笑顔になった。
「ありがとう。桜の精さん」
そう言って君は立ち上がり僕を見上げた。その表情は晴れやかだった。
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