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「ねえ、君学校には行かないの?」
桜の木を見上げていた前川さんがくるりとこちらに振り向きながら言った。
「あ、えっと学校に行くのめんどうくさくなってしまって……」
わたしがそう答えると前川さんは、「ふーん、サボりなんだね」と言った。
「確かにわたしはサボりですよ。でも、前川さんこそ高校生か大学生くらいですよね? ここで何をしているんですか? サボりですか?」
わたしがそう聞くと前川さんは、
「僕はいいんだよ。ここで寝ていたのさ」と言って桜の木の下の芝生にごろんと仰向けに寝転んだ。
「あ、寝転んだ~」
桜の花びらがさらさらと芝生に舞い落ちる。そして、前川さんの頬にも桜の花びらがくっついた。
「君もサボりだったらここで寝転ぶといいよ。気持ちいいよ」
「あ、遠慮します」
「ふーん、そっか。じゃあおやすみなさい」
目を閉じる前川さんと桜の花びら。色白のその肌にさらさらと舞い落ちる桜の花びらがとても綺麗で絵になるなと思いながらわたしはじっと眺めた。
わたしもここで眠ると嫌なことも全部忘れることができるのだろうか?
そんなことを考えながら見上げた桜の木はとても綺麗で儚げでなんだか哀しげに見えた。
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