桜の木の下で

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「ねえ、前川さん」 わたしは、桜吹雪が体に降り積もっても気にせず目を閉じている前川さんの隣にそっと座った。お尻がちょっとチクチクするけれど気にしない。 「うん? どうしたの桜子ちゃん?」 前川さんはぱちっと目を開きわたしの顔を見上げた。その見上げた前川さんの目と見下ろしたわたしの視線が絡まり合う。 「なんだか自由で羨ましいなと思って……」 「ふーん、自由で羨ましいね。そうかな?」 「うん、そうでしょ。だって、こんな昼間から桜の木の下で呑気に寝ているんだもんね」 「あはは、まあそうだけどね。でも、桜子ちゃん君だって、僕と同じ場所にいるんだから人のことは言えないと思うよ」 前川さんはクスクスと笑いながら体を起こした。 「……あ、それもそうですよね」 わたしもクスクスと笑った。 「そうだよ。呑気が一番だよ」 「う~ん、呑気が一番かな? あ、さっきからずっと思ってたんですけど髪の毛に桜の花びらがくっついているんだけど」 わたしは、前川さんの少し長めの前髪と髪の毛全体にくっついている桜の花びらを指差した。 「えっ、桜の花びらが頭に! あ、でもいいや春らしいからくっつけたままにしておこう」 「えっ!? 桜の花びらそのままにしておくんですか?」 わたしはびっくりして目を見開いた。 「そうだけど何か?」 前川さんは当たり前だという顔でわたしを見た。
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