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桜の花びらを髪の毛にくっつけても気にしない前川さんが印象的だった。自由気ままで猫みたいなそんな前川さんが羨ましくてまた会いたいなと思った。
それからわたしは、学校に向かう川沿いのこの道を通る度に前川さんがいないかなとちらちらと確認するようになった。
だけど、あれから何日か経つけれど前川さんを見かけることはなかった。
「なんだ、毎日呑気にここで寝転んでいるんじゃないんだ。ツマンナイ」
わたしは、独り言を呟き桜の木を見上げる。すると、鮮やかな桜色の世界に包まれた。
それから数日後。
今日も桜の花びらが風にさらさらと舞っている。この季節はとても綺麗でそれでいて寂しげでもある。
学校の帰り道早咲き桜が咲き誇る川沿いの桜並木を歩いていると、「こんにちは桜子ちゃん」とわたしを呼ぶ声が聞こえてきた。
その声に振り返ると、少し長めの前髪に桜の花びらをくっつけている前川さんがニコニコと笑って立っていた。
「あ、前川さんだ! こんにちは。また、桜の花びらが髪の毛にくっついていますよ」
「あはは、気にしないよ」
「……ですよね」
「そうだよ。春らしいからこのままにしておくのさ」
「そうですね。春は桜の季節だもんね」
わたし達は顔を見合わせ笑い合った。
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