ひらひらと舞い落ちる桜の花びらと君

桜の木の下で

前川さんもわたしと同じような悩みを抱えているのだろうか。

わたしは前川さんをちらりと見た。その表情から何を考えているのか読み取ることはできないけれど、きっと前川さんもいろいろ悩みながら生きてきたのではないかなと思う。

呑気が一番なんて言っているけれど、それも恐らくいろいろ辛いことがあったからこそなのかもしれない。

「難しく考えなくてもいいんですよね」

「うん、そうだよ。呑気に気楽が一番だよ。桜の花びらが頭にくっついていても気にしない。なんてね。そんな簡単なことではないのかもしれないけれどね」

前川さんはそう言って視線をこちらに向けにっこり微笑みを浮かべた。

そうにっこりと微笑みを浮かべたのだけど……。わたしの目の前が桜色に染まった。

そして、前川さんの表情も歪んで見えた。

桜の花びらがさらさらと舞う春のこの世界でわたしはどうしたのだろうか。