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「風邪ひくよ、弘」 「……っ……竜美……?」 「こっち向いて?」 「……無理だ……」  これは現実じゃない。わかっている。……でもやっぱり認めたくない。あいつが死んだなんて……。 「僕はここにいるよ」 「……っ」  抱きしめられた背中が温かい。幽霊は冷たいはずなのに……。 「弘が言ったんだよ? 僕がいなくなったら嫌だって」 「……幽霊……じゃないのか……?」 「18年も幽霊してたら悪霊になっちゃうよ。僕は抱き枕の付喪神ユーシン。最初にそう言ったよね?」 「……3日経ったら元に戻るんじゃなかったのか?」 「正確には3日と15時間」 「……えっ? じゃあ……」 「あと5分しかないから、弘の気持ちを聞かせて?」 「……っ……」  やっぱりこいつは「竜美」だ。気づいた時には逃げ道が完全に塞がれている。あの頃もそうだった……。 「ねぇ弘……言って? 僕はなんて言われても後悔はしないから」 「……お前が好きだよ、竜美……」 「……ッ……」  竜美がこんな顔を見せてくれるのなら、もっと早く言ってやればよかった……。 「嬉しい。僕も大好きだよ、弘……」 「……っ」  あぁ、俺……竜美とキスなんてしてる。そういう意味の「好き」じゃないけど、まぁ最後くらいはこいつの好きにさせてやるか……。 「んんッ……!?」  いやちょっと待って。ここまだ部屋の外だし舌とか入れられたら困る。それにあと5分しかないのにこんなことしてたら、中途半端で終わってこいつもしんどいだけだろ……。
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