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「んっ……?」  なんか胸のあたりがムズムズする……。 「……っ!? おまっ、何して……」  朝起きたら、変態付喪神がさも当然のごとく俺の乳首をつまんでました。 「寝てるあいだに開発しといてあげようと思って」 「いらん!」 「でもいま感じてたよね? 可愛い声でてたよ?」 「出てない」 「出てた」 「出してな……っぁ」 「ふふ、ほら」  くそっ、なんて奴だ。……全力で拒めない俺も何なんだ。 「可愛い……弘」 「……っ……」  目眩がするほど綺麗な顔が近づいてきて、俺は息をするように自然とまぶたを閉じていた。  胸が苦しい。あの時もこうして目を閉じていたら、竜美は付喪神じゃなく、今も人として生きていられたんだろうか……?  小4のときに未遂があった。いつものように竜美の家で遊んでいた時、俺はキスしようとしてきた竜美を殴り、勢いで『死ね』と口走った。  次の日から竜美は学校に来なくなり、家に行っても会うことを拒絶された。そしてそのまま、竜美はこの世を去ってしまった……。 「あの時はごめん」 「……え?」 「あんなこと言って。……本心じゃなかった」 「……うん、わかってたよ」 「じゃあなんで会ってくれなかったんだよ?」 「……弱ってるところを見られたくなかったから」 「俺にもか?」 「……弘だからだよ」 「……え?」 「好きな子に弱みなんて見せたくない。僕も男だから」 「……じゃあ……なんで俺にだけ教えてくれなかったんだよ? 病気のこと……」 「同じ理由。タイミングが悪くて勘違いさせちゃったかもしれないけど、僕が死んだのは弘のせいじゃない」 「……」  竜美の言葉で楽になれたはずが、胸の痛みはまだ消えていない。俺は竜美に許してほしかったわけじゃないのかもしれない……。
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