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「邪魔しないで?」 「……待て。落ち着け。怖い」 「僕は落ち着いてるから大丈夫。怖くない」 「いや、変だ。顔がいつもとぜんぜん違うし怖い」 「僕だって人間……だったから、いつでも笑っていられるわけじゃないよ」 「でもいつもは……」 「笑ってない僕は嫌い?」 「……違う。嫌いなんて言ってない。ただ怖いだけだ」 「……じゃあ僕は、きっともともと怖かったんだ」 「……っ……!」  もはや主演男優賞ものの演技を俺が見破れるはずもなかった。泣きそうな顔に油断した隙に、パンツを脱がされていた。まさにほんの一瞬で。たぶんギネス記録出たな……とか思ってる場合じゃない。 「……ッ!? どこ触ってるんだよっ」 「知らないの?」 「……何が?」 「ここにちんこ挿れてセックスするんだよ。……女の子とするときみたいに」 「……は? 絶対やだ……」 「嫌なら本気で抵抗しなよ。大人の弘なら今の僕に敵うでしょ?」 「……っ……」  やっぱり怖い。本当にもともとこういう奴だったのか? こいつ……。 「幻滅してるよね。でも弘がこうさせてるんだってわかってる?」 「……え……?」 「本気で嫌がってないくせにちゃんと受け入れてくれないから……不安になる」 「……」 「弘のことが何より大切なのに……無理やりにでも犯したいと思っちゃう……」 『無理やり』って。俺の意思はどうでもいいってことか……? 「憐れみでも何でもいい……だって僕はもうとっくに死んでるから。……だから僕だけのものだって言って? お願い……」  うわ……泣いた。なんで? 俺のせい……? 「……ごめん……」 「……理由もわかってないくせに謝るな」 「……うん。だから……わかんなくてごめん」 「……」 「やっぱ怖い……」 「……そうだね。弘のせいで僕はとっくにまともじゃないよ……生きてる頃から」
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