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「ねぇ、舐めていい?」 「……だめだ」 「じゃあ舌で触っていい?」 「意味同じ……っおい」 『いい』って言ってないんだけど。なんで拒まないんだ俺も……。 「昔から乳首すぐ硬くなるよね、弘って」 「……え? 昔って?」 「……」  えっ? なんで『やばい言っちゃった』みたいな顔してるの? 「おい」 「……ごめん。弘が寝てるとき触ってた」 「……いつ?」 「……」 「……」  ショックで言葉が出てこない。何考えてるんだこいつ。そんな昔から変態だったなんて聞いてない。 「だって僕より先に誰かに触られるの嫌だったんだもん」 「誰が触るんだよ? 男の乳首を」 「弘のことが好きな男?」 「……お前以外にそんなのいるわけないだろ」 「そんな保証ないよ」 「……お前はもともと男が好きなの?」 「違うよ。弘が好きなだけ」 「……あっそ」  嬉しいけど怖い。やっぱりそばにいたのが俺だけだったからなんじゃないかと思ってしまう……。 「好きだよ……弘」 「……うん」  だけどそれならそれでいい。でもこれから、今まさに思春期のこいつが女に目覚めたときは、俺の方から離れてやらないとな……。 「まだ信じてないって顔だね」 「……え?」 「……いいよ。一生かけて信じさせてあげる」  そりゃ俺だって信じたいさ。でもそう簡単にはいかない。昔からイケメンで頭もよくて何でもできる竜美がどれほど女子にモテてきたか、俺が誰よりも知っている。  見合いに行く前、普通に女性と結婚して家庭を築くほうが俺にとって幸せ……なんて竜美は言ったけど、それはこっちのセリフだ。……付喪神が人と結婚できるかどうかは知らないけど。  竜美の気持ちは嘘じゃない。俺だってそれくらいはわかってる。……でも未来はわからない。またいつか失うかもしれないと思うと、正直これ以上好きになるのは怖い。
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