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「ごめんね。僕のせいで29歳まで童貞処女でいさせることになっちゃって」 「……言い方」 「一生童貞でいさせることになるけどごめんね」 「やめて。傷つく」  俺はここ一年で、ほんの少しだけツッコミのスキルを習得した。だってこのイケメン付喪神には、基本的にツッコミどころしかない。 「僕は生まれつき心臓が弱かったから、どうしたら死んだ後も弘のそばに居続けられるかって……ずっと考えてた」 「……すごいなお前。ふつう死んだら諦めるぞ」 「普通はね。でも弘に頼まれたら死んでも死にきれないよ」 「……何か頼んだっけ?」 「覚えてないんだ? 僕がいなくなったら嫌だって言ったの」 「それは嫌だろ……当然」 「……うん。だから僕は生前からその方法を模索し続けて、ついに見つけた。付喪神になってずっと弘のそばにいる方法を」  俺に『いなくなったら嫌だ』って言われただけで付喪神になったのか。薄々勘づいてはいたけど、こいつは時々ピュアすぎてやばいから発言には気をつけないとな……。 「人の姿になれるまでには18年もかかったけど、これでも早い方なんだよ。普通は何百年とかいう世界だから」 「……すごすぎだろお前。何したの?」 「まぁ色々ね。生きてる時よりがんばったからもっと褒めて?」 「……そっか。神だから見た目の年齢も自由なんだな」 「ねぇ褒めてよ?」 「俺と同い年くらいになれたりもするの?」 「……それは無理」 「なんで?」 「僕は付喪神になって18年だから、とりあえず今は実年齢のこの容姿でいることしかできない。もっと修行を積まないとね」 「……なんかずるくない?」 「何が?」 「お前だけ若いとか」 「歳上なのに可愛いヒロの方がずるいよ」 「何度も言うけどお前の目はおかしい」  でもこいつの目がおかしくてよかった……なんて今は思える。この数ヶ月で、俺にも欲というものが出てきたらしい。
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