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「ねぇ弘……もう聞かなくてもわかってることだけど、聞いていい?」
「何?」
「僕のことを愛してくれてるから、今まで僕を待っててくれて、応援もしてくれたんだよね?」
「……わかってるなら聞くな」
「でも弘の口から聞きたい。聞かなきゃ安心できない」
「……本当に心配性だなお前は。昔から何も変わってない」
「……ごめん」
「いや……変わってなくてよかった」
どんなときでも俺に対してまっすぐな姿勢は、出会ってから今まで一度もブレていない。だから俺は、今まで心のどこかで安心していられた。
……でも離れてみてわかった。俺はやっぱり竜美と一緒にいたい。『絶対離れない』とか、『一生そばにいる』とか……そんな都合のいい言葉を信じて甘えているだけじゃだめだ。
答えならとっくに出ている。俺はもう二度と、竜美を不安にさせたりしない……。
「お前が好き……いや、愛してる。これからもそばにいてくれ、優心」
「……っ……」
あぁ……また初めての顔だ。もっと見たい。もっと知りたい……。
「おい、泣くなよ。……泣くってわかってたけど」
「……だって……弘が初めて名前で呼んでくれた……」
「……そうだっけ?」
一度呼んだだけでこんなに恥ずかしいのに、そう簡単に呼べるわけがない。
「僕も弘に伝えたいことがある」
「なに?」
「……僕と付き合ってください」
顔を真っ赤にして言った竜美の面影が18年前の記憶と重なり、ふいに目頭が熱くなる。
「まだ付き合ってなかったのかよ、俺たち」
涙と同時に、思わず笑みがこぼれた。あれだけ好きだ何だとさんざん迫って触っておいて、それはないだろ。……でも竜美らしい。これが竜美という奴だ……。
そんな竜美は、虚をつかれたような顔で固まっている。普段は食えない奴だけど、本当はとんでもなく純粋なところもやっぱり変わっていない。
あぁ……好きだ。俺はどうしようもなく竜美が好き……。
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