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「うち親父しかいなくて、しかも飲んだくれの酒乱で……三者面談のときも酒臭くて暴言ばっか吐いてて……なのに遠野はめちゃくちゃ真剣に親父の話を聞いて向き合ってくれて……あのあとうちの親父、少し変わったんだ。きっと遠野が否定しないでいてくれたおかげだ。だから……」
話長いからこの辺で切らせてもらうぞ西野。
「西野のお父さんは口が悪いだけで、愛情あふれる人だ。話せばわかる。たった一人の家族なんだし寄り添ってやれ」
「……ぅッ……ありがとう……あのときの遠野……マジでかっこよかった……」
西野まで泣いた。天変地異の前触れか……?
「遠野先生!」
「どうした中村」
「たくさんの萌えをありがとうございました! ときどき供給過多すぎてしんどくて死にかけましたけど、最高に尊かったです!」
「……そうか」
熱量だけはひしひしと伝わってくるんだが、中村が言っていることは最後まで一つも理解できなかったな……。
──およそ一時間にわたり、一人ひとりの生徒が俺に対しての想いを語ってくれた。まさかこんなことになるとは思っていなかった俺は、中盤から涙をこらえるのに必死だった。
「よかった……みんなちゃんと見てたんだね、遠野先生のこと。……見てほしくなかったけど」
とつぜん立ち上がった竜美が何故かこちらに近づいてくる。
真顔がこわい。いきなりトーンダウンした竜美の声に、教室内もざわついている。なんかやばいぞこの流れ……。
「最後に僕からも一言いいですか? 遠野先生」
「……何だ山田。……おい、距離が近……んっ?」
竜美の瞳が目の前にある。唇には柔らかい感触……。
「遠野先生は僕のものです」
「……っ」
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