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「ごめん、優心……」  俺を抱きしめた優心が、小さな手で髪を撫でてくれる。見た目は子供だけど、やっぱり優心だ。この体温と匂いに包まれているだけで、心底ほっとする。  どんな姿でもいい。やっぱり俺は、優心がそばにいてくれないとだめだ……。 「あのまま生きていられたら……弘と一緒に歳とってこられたらよかったのにって思ってた」 「……うん」 「……でももし僕が生きてて、これまでの18年間ずっと弘と一緒にいたら、今頃はもう愛想尽かされてたかもしれないし……これでよかったんだろうなって今は思ってる。僕は今がいちばん幸せだよ、弘」 「うん、俺も。……でももしお前があのとき死んでなかったとしても、今でも一緒にいたと思うよ……俺はね」 「……どうして?」 「お前がいない世界なんて想像できないから」  存在を忘れていた歳月も、優心は抱き枕として一日たりとも離れずに俺のそばにいてくれた。だから俺は生きてこられたんだと、今ならわかる。 「昔から僕を泣かせるの得意だよね、弘。ほんとはドSでしょ?」 「お前が泣き虫なだけだろ」  俺にちょっかい出して怒られるたびに泣いていた優心が懐かしい。……その結果この何を言っても聞かない付喪神が出来上がったのかもしれないと思うと、複雑な気分だが。
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