しあわせな、桜が咲く

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 歌詞が飛んだ。開いた口が冗談ではなく閉まらなくなった。  室内の歌声が止んだのにも気づかず、外だけを見つめていた。心臓にたまらなく悪い、長い一瞬だった。寿命が計れるものなら、僕のそれは十年くらい縮んでいるかもしれない。 (僕は、いったい何が悲しくて)  このあと、卒業式で送り出す実の姉と、  去年から相思相愛と噂だった男の、仲睦まじいところを、偶然! 目撃しなきゃならなかったのか。 (せめて! せめて卒業してから、家族の知らないところで!)  ……関係が深まってしまうのも、なんか微妙だ。
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