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第二話 *再会*
朝から雨が降っていた。
せっかくの休みだから出かけようと思っていたが、二の足を踏んだ。
携帯が鳴った。
息子の悠輔からだった。
事情は後で説明するから、とにかく車で迎えに来て欲しいとのことだった。
悠輔が自分に頼み事をしてくるのは珍しい。
俺はすぐに迎えにいった。
駅のロータリーに着くと、悠輔が女の子と一緒に立っていた。
驚いたが、雨も降っていたのでとりあえず、2人とも乗ってもらうことにした。
「ありがとう、父さん」
「いや、大丈夫だ、なにがあった?」
「あ、彼女は道明寺すみれさん」
「は、はじめまして、道明寺すみれです、あの、ありがとうございます」
「成瀬暁彦です、悠輔の父です」
とりあえず、車を走らせ、ロータリーを出た。
「俺から、父に事情を話しても?」
「あ、いえ、わたしから話します」
少し震えながら彼女は言った。
「わたし、あの、、悠輔さんに助けていただいて、、あの、電車、えっと、し、しらない男の人に、あの、、えっと」
「彼女、どうやら痴漢にあったみたいで、困っていたので俺が助けたんだけど」
彼女が言いにくそうにしているのを見かねて、悠輔が代わりに事情を説明しだした。
どうやら、痴漢にあって困っていたところを、悠輔が助けて次の駅で一緒に降りたらしい。犯人は分からずじまいだったが、ショックで電車に乗れなくなってしまったらしく、放っておけない悠輔が俺を呼びつけた、ということらしい。
「学校に連絡は?」
「まだ、できてません、、」
「ご両親は?」
「母はまだ仕事から帰ってなくて、、父は、、今はもう一緒に住んでいないので」
「そうか、でも連絡は一応しといた方がいいんじゃないかな?留守電にメッセージかメールでも」
「心配をかけたくなくて、、」
「学校には行けそう?」
「は、はい、、バスに乗れば、1時間目の途中には着くかと」
「いや、行けるんだったら送るけど?」
「でも、、悠輔さんが遅刻してしまいますから」
「学校はどこ?」
「、、、。」
「遠慮してたら、ますます遅くなるよ?」
「いっそのこと学校サボるか?」
「俺はいいけど彼女は困るから!」
「優しいねぇ、悠輔は」
彼女が少し笑った。
「その制服は桜ヶ丘だよね?」
学生の来客も多かったので、制服で大体どこの学校かも予測はついた。
後日、彼女の母親からお礼の連絡が来た。
「道明寺です、道明寺すみれの母です、先日は娘がお世話になりました」
「いいえ、すみれさんはお元気ですか?かなりショックを受けていたみたいですが」
「あ、はい、お陰様で、ひとつ早めの電車で行く、と言って毎日ちゃんと通ってるみたいです」
「それは良かったです、わざわざ連絡ありがとうございます」
「こちらこそ、助けていただき、ありがとうございました」
「いいえ、お役に立てて良かったです、、、というか、あの、」
「はい?」
「もし、間違っていたらすみません、その声に聞き覚えがあって、しかも道明寺さんって俺の知り合いにもいるんですが、、、」
「はい、、道明寺朋美です、成瀬さんですよね?成瀬悠輔くんのお父さんの、、」
「あ!やっぱり?朋美さんのお嬢さんだったんですね?」
ひょんな事から俺たちは再会した。
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すれ違い
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