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「また妹の萌ちゃんに騙されたの?」
「いや、騙されてない。俺の妹は人を騙すような奴じゃない!」
「もうその台詞は聞き飽きたよ。それで萌ちゃんが何を言ったの?」
自慢の妹が言った言葉を披露する時が来たと思って、背筋を伸ばして胸を張って答えた。
「妹の話では『真夏に砂漠でロングコートを着てマフラーを何枚も巻いて長い時間歩くと、稀に伝説のたくわんが手に入る』ということらしい」
「伝説のたくわん!?」
彩月が額に手のひらを当てて困惑していた。頭をゆっくり左右に振って考えに耽っているようだ。
「話がお伽話みたいだね。それを信じて実行するあなたもすごいと思う。私、すごいとしか言えない」
「俺はすごいのか、妹のおかげだな、良かった!」
彩月はさらに困ったように眉根を寄せた。爽やかな彩月と話していると、少しずつ元気を取り戻していくのを感じられた。
「そういう意味で言ったんじゃないよ。手がつけられないと思って。それで、その伝説のたくわんというものをあなたは食べたいの?」
「食べてみたい。妹の話によると、伝説のたくわんを食べると天候を自由自在に操れるようになるらしい」
彩月が首を傾げて、怪訝な表情をした。
「どういうこと? 神様になれるの?」
「俺も彩月と同じように神様になるということなのか妹に聞いたら、はっきり違うと言われた」
「じゃあ、何になるの?」
「スーパー天気予報士!」
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