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彩月が腕を組んで考えていたが、思いついたように声を出した。
「肝心なことを聞いてなかった。そういえば、私はなんでここに呼ばれたの?」
「それは妹が『伝説のたくわんがなかなか見つからなくて疲れた時は、大好きな人を呼んで一緒に歩くと見つかりやすい』と言っていたからだ」
その言葉を聞いて、彩月は顔を逸らした。その仕草の意味がわからないので聞くことにした。
「どうした、彩月、俺は何か変なことを言ったか?」
彩月が下を向いて消え入りそうなほど小さな声で呟いた。
「……告白みたいなものじゃない」
「告白?」
自分が言った言葉を思い出すと、じわじわと顔が赤くなるのを感じた。
「妹にやられたな」
「私が言うまで気づかなかったあなたも悪いと思う」
「確かに」
彩月が切り替えたように向き直った。
「それで他には、萌ちゃん……妹さん、何か言っていたの?」
「なんで萌ちゃんから妹さんに変わったのかわからないけど、他には『彩月さんに会ったら兄貴のことを宜しくお願いしますと言って欲しい』と言われたな」
彩月がまた顔を逸らしたが、首を何度も左右に振って痛そうだった。俺は顔を逸らす意味がわからなくて、なんて声をかけたらいいかわからなかった。
しばらく二人の間に沈黙が流れた。
彩月がゆっくり深呼吸して落ち着いてから満面の笑みで俺を見た。
「せっかくここまで来たんだから、一緒に歩こうよ。陽向!」
「そうだな。一緒に歩こう、彩月!」
歩き始める時に彩月が俺の手をしっかり握っていた。
とても嬉しくて妹への感謝の気持ちでいっぱいになった。
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