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わたしがだんまりを決め込むと、芳賀はアメコミヒーローのキーホルダーがついた鍵をじゃらじゃら鳴らしながら鍵を開けた。
半分だけ開いた玄関扉から中を覗き込み、わたしの方を振り返る。
相変わらずまん丸い黒目。
犬っころの目。
「ごめん。部屋、きったないわ」
「なんでもいいよ」
「あー……ていうか、いいもんなのか? これ」
「いいって、なにが?」
しれっとした顔で返した。
目を泳がせる芳賀が言わんとしていることはわかる。
こんな夜更けに男女が一つ屋根の下にいていいものなのか。
終電がないということは、ここに泊るつもりなのか。
たぶん、そんなところ。
常識のない行動をするわたしでも、世間一般の常識をわかってはいる。
黒目がちの目はなかなか泳ぎを止めない。
重たい前髪で隠れた眉は、捨てられた子犬みたいに下がってるんだろうな。
困ってるだろうな。
迷ってるだろうな。
けれど、わたしがこんな行動をとったのは芳賀のせいでもある。
かなりのこじつけだけれど。
「芳賀、前に男女の友情は成立するって言ってたじゃん。
それにナツミだって、もしわたしと芳賀が一晩一緒にいたって気にしないって前に言ってたよね。
心配だったらナツミに連絡して許可とれば?」
突然来たわたしがえらそうに言うのは、なかなか失礼で、なかなかおかしい。
ツッコミが入るだろうか。
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