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「そっか、そうだな」
少しの空白を空けてから芳賀は呟いた。
意外にも冷静な声。
芳賀は玄関扉を全開にして、わたしを招き入れた。
むあっとした空気のなか、広い背中に続いて廊下をぺたぺたと歩く。
無言で差し出された丸いビーズクッションをお尻の下に敷くと、クッションはお尻に合わせて形を変えていった。
なんて従順。
二時間、いや三時間くらいだろうか。
立ったりしゃがんだりを繰り返しながら家主の帰りを待っていた疲れが、クッションに吸収されていく。
見渡してみると、自称きったない部屋は言うほどきったなくはない。
フローリングの床の上で、Tシャツや空のペットボトルがいくつか寝そべっているくらい。
ガラスケースに並べられたアメコミヒーローたちは、春に大学のみんなでたこ焼きパーティーしに来たときと変わらずにピカピカと輝いている。
きちんと手入れしているのだろう。
たこ焼きパーティーの日は、みんなで朝方まで飲んで昼まで雑魚寝した。
夏休みの小学生みたいな顔をして、すぐ隣ですやすやと眠る芳賀。
喰ってやろうか、と何度も思った。
ほんのりソース臭く、青白い靄のかかった部屋のなか、そっと触れた前髪は指の間をさらりとすり抜けた。
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