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厳粛なセレモニー。それは卒業式だ。
このお話は、1000体を超えるロボットたちが様々な用途に別れて育成を受ける学校――【ロボット育成学園】での一幕である。
「ワタシタチハ ケッシテ コノ ゴオンヲ ワスレルコトハ ナイデショウ」
整列された中から一体の、いや、一人の人間のような形をしたロボットが前に進みでる。
「ボクタチ ワタシタチノ イママデノサンネンカンー」
その言葉の後にそれぞれが続いた。
「タノシカッタトキモクルシカッタトキモ」
「アッタケド、スベテガイマトナッテハ イイオモイデデス」
ロボットの高い声音。
それは天にまで届きそうだ。
「センパイタチニ オソワッタ シャゲキクンレンー」
「センソウナンテー ニンゲン ドツイタロカト オモッタケレドー」
「ヒトヲ タスケラレタトキノ ヨロコビハー」
『ワスレルコトガデキマセン!!』
ここはピシッと決まる。
「ソシテ キビシカッタ カイゴクンレンー」
「ヨワイ ヒトヲマモレルヨロコビー」
『ミライノ キボウニ ミチアフレマシタ!!』
『コレカラ ワタシタチハ カンシャノキモチヲコメテ ウタヲ ウタイマス』
一瞬の間の後に、
指揮棒を持って、さんはい!
~🎶 タノーシカッタ アノヒー
(アノヒー)
ハジメテノ〜 ヒトトノフレアイ〜
(アタタカカッター)
ユトリ モ サトリ モ オトモダチ〜
ハジメテノ〜ウンテンケイケン〜
(ヒトヲ ハコンダ ヨロコビー)
ハジメテノ〜イクジタイケン〜
(セイチョウ ヲ ミマモルー)
ミーンナ トッテモ イイケイケーン
ゴミカイシュウモ〜 ピカピカデー
イイキモチーニ
ナルッ!(ナルッ)
ルルルルルルー
ルルルルルルー
シッパイモ〜シタケレドー
ソレハ スベテ イイケイケンー🎶
歌を聴きながら、この訓練に関わった女講師たちは涙を滲ませた。
社会にロボットが進出しだしてから幾年も経ったが、凄まじい成長を感じる。
「皆さん、ご卒業、おめでとうございます。これからは、残された数少ない人間の世界でお役に立ってください。今期は素晴らしい完成度でした。不適合ロボットはたったの208体。あとは……」
学園長は長々と挨拶をした。
『アリガトウゴザイマス! セカイノ タメニ ガンバリマスッ!』
ロボット達は、花束を講師たちの前に置いた。そこには美しい花畑が広がる。
そして、ピシッと一糸乱れぬ軍隊のような整列を崩さないまま、式典は終わったのだった。
*
「貴志ちゃん、なにみてんの?」
「んーとね。またロボット達が卒業して、人間界にたくさんくるってニュース」
そんな幼いわが子の言葉に母は苦笑した。
「あー、本当にロボットだらけよね」
「さみしいよね。パパ達は戦地で捕虜になっちゃったから」
~完~
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