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札幌での生活
俺は地元の高校を卒業後、都会に憧れ、札幌市内にあるパン工場に就職した。10年働いた時、同じ工場で働く先輩に、独立してパン屋を開業するので手伝ってくれないかと誘われ同意した。
先輩と二人、寝る間も惜しんで働いた。
パン屋は成功し、TV番組や雑誌で紹介され、どんどん忙しくなった。
俺と先輩の二人では対応できないほど注文は殺到したが、先輩は他の人間を雇いたくないのだった。
「おまえと二人で、できるだけのことをすればいいと思っている」
毎晩、夜の10時過ぎまで働き、朝は3時起き。
土日も祝日も休まず俺たちは機械のように働き続けた。
研究熱心な先輩の試行錯誤で作られた、米だけで作った食パンは大ヒット商品となり、市内の老舗ホテルとの契約が成立した。
ホテル用の食パンを焼くとなれば、365日、休めない。俺と先輩の二人だけでは、万が一、どちらかに何かあれば責任を果たせない。
それでも先輩は人を雇わなかった。
先輩は47歳の時、ついに過労で倒れ半身不随になった。
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