娘と帰宅

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娘と帰宅

魔王は、イライラしながら俺にレントゲンの原理から今の機器の仕組みまで教えてくれた。 まあ、アースツーと言われるこの世界で、唯一宇宙に身を晒しかけたのが俺だったし、まあ理解はそう難しくなかった。 「結局、今は魔力炉から得た魔法粒子を人体に透過している。放射線物質は危険だが、そもそもどこで採取したのかも不明であった。この機器は人体に一切悪影響がない。γ線を浴びて細胞を破壊する危険は存在せん」 見つからないのは何となく解った。多分忘却島だよ。経済協力連合、と言うかエリゴール・ゼニスバーグがコッソリ核実験してた島で、ステラが生まれた時に核で吹っ飛んだんだ。 「まあ解ったよ。確かに便利だな。コーウェル先生がいなくても、こいつがあれば」 娘を抱いて俺は言い、娘はアへーって顔して俺のお腹をソファー代わりにしてご満悦だった。 「そうねえ。診察技術の画一化は大事よね」 「しょうがない。過保護すぎる魔王のおじちゃんの顔を立てるか。親父に話しとく。多分2台分無料供与求められるぞ。プリムが生まれたご祝儀で」 アカデミーの経理担当なのがレスターだった。 「2台くらいならくれてやってもよいが、貴様の持っているその本は何だ?」 「ん?タレイアの回想録だってさ」 「タレイア妃?中央大陸の最初の女王ね?マリルカの大先輩の」 「私が君臨する前の話ではないか。貴様、その頃の貴族文化に興味でもあるのか?」 「まあちょうど、アリエールんちに厄介になっててな?あ」 魔王が本を取り、高速でページを捲った。 「ふん。変態の色と欲の系譜ではないか」 マジか。あれで読んだの? 「たまに凄いなお前」 「1万ページあった旧約聖典ですら、30秒もあれば読破可能だ。瞬間映像記憶と言う奴だ。にーー別に誰でも出来る。貴様にだって出来るだろうが。銃を持てば私等よりよほど」 にーーが何かは不明だが、 何年か以降、とある非常識な知性を有する一家に、俺は酷い目に遭わされるようになる。 「貴様は、例のドリルの家にいるのだろう?つまりまあ、貴様の腹の中にある引っかかる何かの答えは、その本にある。要するに、つまらん叙述トリックと言う奴だ。ハイジはクララとライラライラと遊んでいればいいのだ」 ライラライラって何だよ? もう魔王は、その本や、それにまつわる歴史から興味を失っているようだった。 多分、同じような不可解な何かに、勝手に気付き答に1人で至り、興味を失う男にソックリだった。 ステラ♡ママんとこ帰ろう♡ ステラを抱えて俺は言った。 「うん!マー!」 嬉しそうに言ったステラは、魔力を発動させた。 あん? 気づけば俺は、フラさんの実家の前にいた。
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