現れたエム

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現れたエム

私のお母さんは、エマニュエル・リトバールさんをむっちゃ斬りたがっていた。 「許せないあのビッチ!思えば、士官学校に入った時からあんな子だったのよ。ジークにちょっかいかけたと思ったら、次はグラムだった。元陛下のことね?いつも自分が中心にいないと気が済まないのよ!あの忌々しいプラチナの小娘が!」 お母さん、ちょっと落ち着いて。私がそう言おうと思ったら、扉が空いて、物凄いゴージャスな女が入ってきた。 「忌々しくてごめんなさい?ターニャ」 エム。お母さんはそう吐き捨てた。 この人が、エマニュエル? でも、凄くよく解る。 ロールした豊かな金髪と言い、同性の目から見てもドキッとする、美しいボディーラインと言い、瞳の色まで、ソックリ。アリエールに。 「あら?そこにいるのは、王妃殿下じゃございませんこと?」 深いアメジストの瞳が、私を射抜いていた。 「(わたくし)はエマニュエル・デュバリー・リトバールと申します」 あ、懐かしいわね。宮廷風の挨拶。 「エム!あんた、また何かやらかしたわね?!今度は何?!また浮気?!」 「やめてくださらない?ターニャ、貴女っていつもそう。確かに(わたくし)はモテるわ。貴女が唯一優れているのは、そのおっぱいだけね。あら、王妃殿下もいやらしいおっぱいで、それでジョナサンを誘惑したのね?まるでミラージュ陛下と同じ。おっぱいに胡座をかいて、男を誘惑している。なのに、(わたくし)をビッチって言うのね?ターニャも貴女もそこは一緒。グラムちゃんの部屋でジークとしてたでしょ?(わたくし)は、極めて同性に友達がいないターニャの為に、凄く骨を折ったのよ?」 ええ?お母さん?それホント? 「何言うだあああああああ?!あんたあああああああああああああああ!許さん斬る!あんたをぬたああーんああああー!」 激昂したお母さんを放って、エマニュエルは私を見た。 あれ?アメジストじゃーーない。 「(わたくし)にも守るものはあるの。(わたくし)の愛するアリエールの望みは1つだけ。それが叶うなら、娘の男と寝るくらいのことはするわよ?(わたくし)だって、母親ですものね?」 は?それは、斬ってもいいってこと? 私は剣に手をかけた。お母さんはとっくに。 エマニュエルの瞳が、強い光を放った。 あれは、ミスティック・トパーズ? ウエスト・ランドで加工された、きらびやかに色の変わる宝石。 青、藍、紫に変わる気まぐれで美しい、私の部屋には、彼が贈ってくれた指輪が。 芳しい香りに包まれていた。 「(わたくし)は、ただの過保護な母親よ?若いイケメンが好きなだけのーーね?」 エマニュエルは艶然に微笑んで去っていった。 気が付いたら、ステラを抱いた、最愛の旦那様が待っててくれた。 その瞬間、私は彼が好きで好きで堪らなくなって。 「お母さん!フェリックスを今日はお願い!フェリックス?おばあちゃんは好き?」 「あーう!」 「ちょっと待ってフラさん!フェリックスが喋ったの?!ステラ!弟が喋ったぞ!」 「ばぶう?ばぶ!」 フェリックスが伸ばした指を、ステラはきゅっと握った。 「ばーぶ。ばぶ?」 「ああーう」 何か通じ合う、姉弟(きょうだい)の姿があった。 それから、フラ乳をお腹いっぱいに飲んで、ステラはまた魔王の耳を齧りに消えた。 今日は父娘で過ごしたかったがなあ。 タチアナさんは、どこか素っ気なく、王様の息子を預かってくれた。 あれ?まあいいや。 「フラさん?ユノと5回しちゃったからさ、今日は温泉でゆっくりしよう?」 彼女のうなじは、ハッキリ発情臭を(たた)えていた。
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