答え合わせ

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俺は、こう仮説を披露した。 「フリードリヒは、要するに性欲の減退に苦しんでいたという。日に日に回数は落ち、ボッキンキンを維持することも出来なくなっていた。いつも側にいたのは剣聖アーデルハイトだけだった。あらゆる暴力から王を守っていたが、どっこいアーデルハイト自身も、フリードリヒに憎しみを抱いていた。恐らく現場は玉座の間だ。痛みを感じる暇もなく、アーデルハイトは王の命を絶った。だがおかしいのは、アネモネという奴隷に発見されるまで、誰も世界の中心である王の崩御に気がつかなかった点にある。更におかしいのは、タレイア、お前だ。何故、王を殺害した謀叛人を、生涯側に置いたのか?考えられることは幾つかある。例えば、タレイアがアーデルハイトの叛意に気づいていた可能性がある。俺達が巻き込まれた革命の時、ミラージュが乱用した叛意未遂罪と言うのは、タレイアが作り出した法律だ。ありゃあ暗殺されそうな王が、邪魔物を処罰する為の取って置きだが、それは、かつて身内を暗殺された経験から生み出されたものじゃないかと思う」 「惜しい。でも違うわね。私のフリードリヒを暗殺する必要を感じなかった。こと女性の社会進出と言う点において、フリードリヒは誰よりも先に行っていた。馬鹿は馬鹿なりに役に立ったからよ」 タレイアはあっさり否定してきた。 「その言葉に嘘がないなら、答えはこれしかない。フリードリヒ・トエル・シュバルツェス・ウィンシュタットは、自殺したんだな?アライダー・ファーストエビルの本に、かつて美食に耽り、財産を食い潰して服毒自殺したと言うアピキウスと言う人物の逸話がある」 アピキウスと言う人物は、エビルの認識では、かなり昔の大富豪だったらしい。 美食においては天下一品だったらしく、彼が開発させた、アピキウス風のモッツァレラチーズケーキは、ミラージュも好物の1つだった。 「性欲の減退で世をはかなんで自殺する。フリードリヒも、極めて傲慢な理由から自殺を図ったようだ。アーデルハイトは王にトドメを刺したんだ。タレイアは、夫の精神の変調を感じていた。(はしため)を連れて王に会いに行ったタレイアは、そこで夫の自殺した遺体を発見した。コッソリ亡骸を始末したあと、改めて真相を知っていた2人を、身内に飼うことに決めた。1人は奴隷で、金をつぎ込めば何とかなったが、アーデルハイトは金で動くような人間じゃなかった。同時に、タレイアは貴族議員の設立と、それに伴う女性議員席の擁立を急いでいた。タレイアがアーデルハイトを護衛に付けたのは、はその全てにおいて多大な影響力を持っていたんだ。魔王が言っていた叙述トリックの正体がこれだ。実際解った魔王は大したもんだ。アーデルハイトは女だった。そして、彼女の妹のヘルマータは、フリードリヒの情婦で、既に妊娠していた。アーデルハイトが王を守ったのは、単に妹の為で、ヘルマータは王を愛していた。憎いクソヤリチン王ではあったが、憎いと同時に甥っ子か姪っ子の父親でもあった。ヘルマータはのちに、伯爵夫人となって議員席の重鎮にまでなった。つまり、直系ではないにしろ、ヘルマータはアーデルハイトの妹で、何代目かの王の妃になったこともあった。シンダーエラ・フランドール。ミラージュ、お前、フランドールを名乗ってたな?母方の曾祖母がフランドールだって」 まあね。ミラージュは言った。 「フランドールは忘れられた古い血族で、それでエンプがアーデルハイトの子孫であることも知った。エンプの娘のアリエールと、こんなに長い付き合いになるとは思わなかったけどさ」 「再従姉妹(はとこ)だったんだな?お前等」 「祖父母の孫同士が再従姉妹でしょ?まあ、親戚同士と子供作ったのダーリンじゃんか」 まあそうだけどさ。 「エンプの存在を知ったのは、私が10歳の頃だった。お父様が後輩の娘に会わせろって言ってたから、コッソリ見てたのよ。まあ相変わらずの縦ロールだったけどさ。何かね?その時、クソ可愛い子に心を奪われた小僧がいたっぽいのよ。それで、そんなダーリンに新しい宿題よ」 まだあんのか? 「エンプは、お父様の仕官学校時代の後輩で、実は陰の王族の護衛を宿命づけられてた人間だったわ。最初のクーデターの時、ダーリンがこっそりエリュシダールの奴を殺ったでしょ?何で狙撃したの?」 今でも覚えてる。2キロ以上の距離の強風の中、俺はエリュシダール公爵をヘッドショットした。 だが、それが1番簡単な方法だったからだ。 たかが趣味の鷹狩りに、まるで遠征でもしてるのか?ってレベルの護衛の数だったし。 そう。それよ。ミラージュは言った。 「アーンスランド(エリュシダール)のおっさんは知っていたのよ。王を狙う者は、アーデルハイトに誅される。それは、タレイアの時代を生きた人間にとって決して忘れてはいけないことだった。まさかあんなやり方で殺られるとは思ってなかったし。この時代超越(リープ)したチート勇者は」 ごめんな?あの時にウィンチェスター持ってて。 「はっきり言って、エンプとマリウスはスタイル違うけど、限りなく近かった。まあマリウスは士官学校通ってないし、年齢的に離れてるんだけど、イースト・ファームで修行云々してなきゃ、エンプは最強だった男よ?」 運が悪かったなエンポリオ。俺とかマリウスいなきゃ最強だった男って。 「まあ、エンプは王家に害をなさなきゃ無害なオタク親父なんだけど、今ちょっと動いてんのよ。宿題。エンプを探せ。あ?ダーリンあんた何よ?」 「え?しないの?ミーちゃん?」 おっぱいをモミモミしていた。 ミーちゃんって言われて、おっぱいモミモミされたらそれは堪らなかった。 「じゃあ、私ダーリンにお迎え棒してもらうから。アフによろしく言っといて。ん♡ああ、あと庭の掃き掃除しとけ」 「死ね。フリードリヒモドキが」 タレイアは、かつて自分が寝泊まりしていた部屋を追い出された。
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