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もういいよおっぱいは忘れろ!俺は、ガッチリ拘束されたエマニュエルを解放した。
「ああ!何を?!」
タチアナが叫び、恐ろしい芳香に満たされた。
「よくも、よくも私をタコ殴ってくれたわねターニャ。子供にお帰り」
「お、おお、おぎゃああああ!」
巨乳のおばさんが、赤ん坊返りして泣きわめいていた。
「もうおしまいよ。私の謀意は暴かれた。こうなったら、新たにリトバール朝を設立するしかない。私のアリエールが玉座につく。貴方には、アリエールのペットの地位をあげる♪はーー?」
俺の魔法が、正確には魔法で合成された血液が、エマニュエルに降りかかった。
「催眠蝶に吸血させた、俺の血液を培養した。匂いはより強い匂いで打ち消すしかないんだ。もう、俺にはあんたの魔法は効かない」
タチアナにも血が降りかかった。
「あ?ああああああああああああ!エムううううううううううう!食らえうだらあああああああああああ!!」
チャクラム・レイジが滅多矢鱈に解放され、エマニュエルを両断する瞬間、激しい音が響き、俺は発射した両の9ミリを虚空に向けていた。
「何するのよおおおおおう?!ジョナ様あああああああああ?!このクソビッチを誅するチャンスなのに!何で?!どいつもこいつもエムの肩持つの?!私は邪魔者?!私が夢持っちゃいけないの?!うわああああああああああああああん!」
よく解らんが泣いちゃった。
自由になったエマニュエルは、タチアナに駆け寄った。
「あらあら。泣かないでターニャ。あー、いつもそうよねえ?ジークがいなくって、グラムは役に立たないし。可愛いターニャ。私達お友達ですものねえ?」
エマニュエルに抱き締められて、ターニャはエマニュエルにすがり付いていた。
「エムううううううううう!ああああああああん!」
反目し合っていても、タコ殴りにされても、それでも娘時分の繋がりに偽りはなさそうだった。
大きく溜め息を吐いて、俺はエマニュエルに言った。
「逃げ打つチャンスだったのに、タチアナを慰めるんだな?」
「アリエールから聞いたわよ?貴方からは逃げられないもの。アーンスランドのおじ様を射殺した貴方には特に」
今更出てきたな。その名前。
「そう。私は、マルガレーテの再従兄弟だった。既に死んでしまった可愛いマルガレーテを、私なりに愛していた。お墓もなくて、花すら手向けられない。それだけの悪が彼女にはあったと言うの?」
ああ。俺は即答した。確かに、彼女は不幸な女だったが、それでも、彼女は悪でしかないとハッキリ言えた。
「何だろう、大体解った。あんたにとって、世間一般の善悪は、あんたとは無関係なコードで結ばれていたんだな。超然とした厄介なママさんだよ。アカデミーの国王と王妃の離婚騒ぎを企てれば、普通は投獄されるレベルのことだ。セントラルですら、前であれば爵位没収で追放されるが、それですら、あんたには痛くも痒くもないんだな?あんたにとって、1番大事なのが、アリエールの幸せだった。だが、考えてもみろ。あんたは特に考えなく、息吐くように人を操った。そのまま行けばアリエールは俺の正妻に収まる。上手く行けばいい。だが、失敗したらどうする?アリエールとの関係にケチがつくことになる。ロズウェルのママが、シンママになってもいいのか?」
キッとこちらを睨んだ。
「ロズウェルは関係ないでしょう?!私だけを裁きなさい!」
うん。
「泰然としてた毒女気取りが、ようやく本心見せたね?」
「貴方は恐ろしい男ね?フリードリヒみたいと思ったけど、あっさり私の魔法を打ち破った。私は貴族よ?貴族には貴族の理がある。上手く行くかは解らなかったけれど、それでも、私は、アリエールの母親よ?娘の幸せだけが、私の喜び。私の全て。失敗して処断されるのは、私だけで十分でしょう?だって、普通の母親にはなれなかったけれど、それでも、私は、お母様なのよ?」
そっぽを向きながら、ポロポロ涙を流していた。
さっきまで、ただ綺麗なだけの女が、今は、ただの母親でしかなかった。
「うん。じゃあ国王として、量刑を決定する。学園国家アカデミーの国王並びに王妃、王妃の母親に対する洗脳系魔法を使った罪で、エマニュエル・デュバリー・リトバールに、2日間の禁固、並びに論文作製の刑に処す」
「えーー?それーーだけ?」
「何言ってんだ?論文の刑は重いぞ?お前、貴族の理が、とか言ってたがな?アカデミーにとっちゃ国王からしてニセプラチナだったんだぞ?俺達の国じゃ、しょっちゅう王妃に殺されかけるのが毎日だし、国民のほとんどが俺死ねって思ってるんだぞ?」
は?
「私を、殺さないのね?」
「アリエールの母ちゃん殺せる訳ないだろうが。ミラージュに監禁された時、フラさんがミラージュを斬るっつってたのに、結局俺が寄ってたかって割られて終わった。俺の国はこんなもんだ。アリエールの幸せを願った母ちゃんに、礼をこそすれ罰を与える訳ない。ありがとう、エムママ」
柔らかい笑みを浮かべられて、エマニュエルは落ちた。
泣きながらしがみつかれていた。
特にタチアナが。
タチアナ、俺のワンちゃんに触るな。
「ねえ、エム?エンポリオどこにいるか知らない?」
うなじの匂いをクンクンして、俺はそう聞いた。
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