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奪われた男の子
その時、山の稜線に引っ掛かっていたダインクーガーに、1人の女が乗り込んできた。
寝室に向かうと、エルネストの女達が、揃って轟沈していた。
未だに絶頂が続いていたアリエールの裸体を、女は見つめていた。
お臍の下を撫でると、ビクンと体が震えた。
意識を取り戻したフランチェスカは、ベッドで寝ているはずのアリエールの姿がないことに気が付いた。
あら?もう起きたの?
そんな訳がない。あれだけのワンちゃんラッシュで奥を小突き回され、物凄い絶頂を味わったアリエールが、意識を回復しているとは思えなかった。
大体、いつ着替えたの?服も着ないなんて。
フランチェスカの認識の外で、アリエールとロズウェルを抱えた女が、馬を駆ってどこかに消えた。
ジョナサンが、エマニュエルを伴ってダインクーガーに戻った時、フランチェスカは慌てていた。
「貴方!アリエールがどこにもいないの!ロズウェルまで!」
ジョナサンは無言で、寝室に駆け込んだ。
「ロズウェルとアリエールを拐った奴は、たった1人だ」
「嘘!どうしよう!アリエールに何かあったら!」
「エム。多分、エンポリオが行った先に、そいつはいる。そいつは、お前の言った通りなら」
「そうよ。きっとあの子だわ。あの子は、私のアリエールに執着しているわ。あの子は、前に死んだシトレのおじいさまの唯一の後継者。それに」
「シンダーエラ王妃の、悲しい隠し子の遺児か。ネイサンの馬鹿野郎が、王妃をレイプしたと自慢してたのが、彼女だ。そして、エンポリオが探してたものも、そいつが持ってるはずだ。アーデルハイトが、残した遺物を」
「ネイサンって、あの時、アリエールに痴漢してた?」
そう。冥府神マナトワの使い。ジョナサンに暗殺された、エルネスト一族の恥。
「ホーバレーに行こう。これは、エンポリオにとっても縁深いが、俺にとっても縁があることだ。アリエールは俺が必ず守る。俺の大事なものを、台無しにしようとする奴は」
ジョナサンを取り巻く空気は、極低温まで冷えていた。
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