娘の思いと父の夢

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 高校には推薦で進み、目標である教師になるため、すべての科目を得意とした。周囲には恋愛が(うごめ)いていたが、大学に入るまでは色恋に走らなかった。難関大学を受験し、見事合格。学年首席の称号を得て、堂々と高校を卒業した。  だが、大学に入って、少し安心してしまった。余程の失態を犯さない限り、教員免許は取れるだろう。成績は上位にあり、走り続けてきた自分を慰労しても良いと思った。折りしもその頃、修吾に想いを寄せる女性がいた。彼女は控えめな性格ながら、かなり強いアプローチを仕掛けてきて、出会いから三ヶ月後には、恋人関係になっていた。  修吾の計画では、二十歳(はたち)で恋を始め、二十四歳で結婚となる流れであった。が、それは二年近く前倒しとなった。女性と肉体関係を結んだのも、計画より二年半早かった。さらに想定外だったのは、大学在学中に彼女が妊娠したことだ。子どもを作るのは二十七歳を過ぎてからと決めていたため、五年以上計画が狂ったことになる。  その彼女は、『責任』として、在学中の結婚を求めた。断ることはできなかった。腹の子がどうであれ、彼女を失いたくないと強く思ったからだ。  教育実習を終えた後、二人は結婚した。とは言え、見方によれば幸福な計画変更だ。修吾は前向きにそう思い、すぐに二人の暮らしをスタートさせた。  頭の中では、未来について考えていた。何年後にまた子どもを作り、何年後には家を建て、その何年後に出世して、子どもが成人したときにはどの程度の収入と地位であるかまでを確かに描いた。  再び計画が狂ったのは、娘が生まれてすぐのことだった。
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