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 ついに高校の卒業式が終わった。  いよいよ三年生の俺にも、巣立ちの時がやってきたのだ。  それにしても、なかなか感動的な式だったなあ……。  担任の先生の涙なんて初めて見たから、こちらもウルっときてしまったぐらい。  みんなで歌った「蛍の光」もよかった。  泣きながら歌う生徒ばかりで、これも素晴らしい思い出になりそうだ。  そんな涙の卒業式も無事に終わり、校庭の隅で咲いたばかりの桜をクラスメイトたちと眺めていると、一人の女子生徒が俺のところへ、息を切らせながら近づいてきた。  見たことのない子だ。  どうやら在校生らしい。  ショートヘアと大きな黒い瞳が印象的な、清楚なイメージの女子だ。  制服のスカートから見える細い足首が可愛らしい。手にはピンクの毛糸の手袋をはめている。  こんな素敵な子がうちの学校にいたのか。  彼女は、ためらいがちに小声で言った。 「あの……先輩。ちょっとお話があるんですが」 「なんだい、話って?」 「ここでは言いにくいので、二人きりでお願いします」  話とは?  思わず少しドキドキしてしまう。 「いいよ、わかった」  俺は彼女と一緒に体育館の裏まで行った。
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