第二ボタン

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 二人きりになると、彼女が切り出した。 「先輩、お願いがあるんですが……」 「え? お願い?」  キョトンとしてしまった。  お願いって一体なんだろう?  まさか愛の告白とか?  付き合ってください……。彼女はそういうつもりなのだろうか。  俺という男も捨てたものじゃないのかもしれない。  しかし、彼女の口から出た言葉は、ちょっと期待から外れたものだった。 「先輩、私にあなたの第二ボタンをください」  おいおい、ウソだろ。告白じゃないのかよ。  ちょっとがっかり。  でも、これは告白にかなり近いものだといっていいだろう。  俺に好意を少しでも持っていなければ、第二ボタンをくれなどといわないはずだから。 「俺の学生服のボタンが欲しいっていうのか?」 「そうです。先輩はもう卒業してしまうから、せめてボタンだけでも欲しいんです。お願いします」  そういって深々と頭を下げる彼女。  ちょっと照れてしまうが、俺は学生服から二番目のボタンをむしり取り、彼女に手渡した。 「はい、どうぞ」 「ありがとうございます、先輩。それともう一つお願いがあります」 「もう一つ?」
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