第二ボタン

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「ええ。この第二ボタンをもらったこと、誰にも言わないで欲しいんです」  顔を赤らめ彼女はそういった。  これは間違いなく恋心というやつだな。  ここから恋が発展して、やがては結婚なんていうことにも……?  少しずつ心臓の鼓動が早くなるのを感じる。  俺は彼女に心の中を読まれないように平静を装い、笑顔でうなずいた。 「いいよ、わかった。これは俺たちだけの秘密だ」 「はい。本当にありがとうございました、先輩」  彼女は顔を赤らめたまま、ニコリと微笑んだ。  そして俺に一礼すると、短い髪を揺らしながら走り去ってしまった。  不思議な陶酔感に包まれながら、俺はクラスメイトの元へ戻った。  仲のいい男子生徒が訊いた。 「おい、あの子の用事なんだったんだよ」 「いや、なんでもないよ」 「隠すなよ。告白だったんだろ」 「違うって」  幸い、クラスメイトの誰も、俺の学生服から第二ボタンが消えたことには気がついていないようだった。  それから三日後の夜。  家族と食事をしていると、玄関のドアチャイムが鳴った。  母が俺にいった。 「悪いけどちょっと出てくれない?」 「あ、うん」
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