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離宮の中にあるサンルームで暖かな日差しに包まれながら、自分の膝の上に置かれた彼の顔を見つめ、美しい銀の髪をひたすら撫で続ける。
薔薇庭園で顔を合わせた日から、彼は一日と開けず僕に会いに離宮へと足を運んでくれていた。
サンルームの大きなソファーにゆったりと長い足を投げ出して、アデルバード様は僕の膝を枕替わりに仮眠を取っている。まだアデルバード様に触れられることに慣れない僕は、彼の体温と微かな重みにすらドキドキとなる心臓の音がバレてしまわないか不安で仕方ない。
固く閉ざされているせいで、美しい琥珀色の瞳が見えないことに少し寂しさを覚えながら、することも無くじっと彼の顔を眺め続けていた。
こうして至近距離で顔を見て初めて長いまつ毛まで美しい銀色だと分かる。本当に寸分の狂いもない程に整った顔はこうして眠っているととても美しい蝋人形のようだと思う。
そっと彼の頬に手を添えると、彼の薄く形のいい唇に目が止まった。
この唇が僕に触れる度に、ドキドキは増していき心臓の痛みも連動するように強くなっている。心がふわふわして、幸せな気持ちになるのに、なんだか深みに嵌っていくようで怖くもなるこの感情は一体なんなんだろう。
頬に添えていた手を動かして、アデルバード様の唇を人差し指でそっとなぞってみた。
まるで吸い込まれそう…。
「ふっ、私を襲う気か?」
「へっ!?」
唇をなぞっていた手を掴まれて前のめりになると、アデルバード様の顔に自分の顔がぐっと近づいた。ばっちりと彼の金色の瞳と目が合って、一気に顔が赤くなった気がする。
「お、起きておられたのですか…」
「あまりにも可愛いことをしてくるものだから目が覚めてしまった」
そう言って、軽く唇にキスをしてきたアデルバード様は、体を起こすと僕を自分の方に引き寄せて頬にもキスをしてくる。
アデルバード様はキスが好きなんだと思う。
僕は恥ずかしくてどうしたらいいか分からなくなるのに、彼はそんな僕の反応を見るのも好きなようで、弄ばれているなって思うこともあるけれど、圧倒的に嬉しいと思う気持ちの方が大きいんだ。
「…恥ずかしいです」
「すぐ慣れる」
絶対慣れることなんてないと思うのに、アデルバード様はそんなことお構い無しに頭とか首とかに容赦なくキスの雨を降らせてくる。
「真っ赤だな。可愛い」
「…ん…っ…」
ねっとりと味わうように深くて甘いキスをされて、お互いの唾液を混じり合わせる。距離が近いせいかアデルバード様のいい匂いが僕を包み込むみたいに香って、その香りに誘われるように自分から彼に舌を差し出した。
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