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「うわっ、ブッサイク」
その一言が僕のことを彼がどう評価したのかを物語っていた。
ずっと顔も知らなかった父は、母にも自分にも似ていない僕を自分の子だと認知してはくれず、本妻は元々僕の母が嫌いだったために期待するだけ無駄だった。
その日から、僕の地獄の日々が始まった。
使用人よりも質素な食事と、厳しい労働。
薄く意味をなさないボロい布を身にまとい、まるで奴隷のように息を殺して生きていく日々。
家族であるはずの人達の機嫌を取り、頭を垂れ、苦汁をなめる思いをしながら過ごす日々は少しずつ僕の心も身体も疲弊させた。
なによりも僕を絶望させたのは、顔も整っておらず対して華奢でもない僕が花人だという事実だった。
通常14歳くらいになれば来るはずの開花期ですら16になった今になっても来ない僕は、本当に花人なのだろうか?と自分ですら疑問に思う時がある。それもあって周りからは花人だと嘘をつくなど身の程を弁えろと後ろ指を刺されたりもする。
流れる涙を袖で拭って、溢れた水を雑巾で拭いて行く。
この国で、こんなにみすぼらしい花人はきっと自分1人だけだろう……、そう思わずにはいられない。
美しい兄は沢山の貴族子息から婚約の申し出があるという。
けれど、パーティにすら参加させて貰えない僕にはそんな機会すら与えられることは無いんだ。
更に冷えきってしまった手を何度も息を吐く事で温めながら、食堂の方から香ってくる美味しそうな匂いに腹を鳴らす。
僕のご飯は大抵、彼らの残した残飯か、酷い時には水1杯。
それでも生きているだけで有難いことだ。
ぐっと目を閉じて、踏ん張れと自分に言い聞かせる。そうしてまた僕は手を動かし始めた。
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