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訳わかんないってアデレードが涙を流しながら言うから、僕もそれにそうだよねって相槌を打つ。
「僕達は仲のいい兄弟にも愛する家族にもなれなかったけれど、あの日アデレードが僕をこの国に嫁がせてくれたことは本当に感謝しているんだ」
「なにそれっ、嫌味のつもり!」
「そう捉えてくれてもかまわないよ。でも、僕は嘘は吐かない。本当に感謝してる。君のおかげで僕は今幸せだよ」
「……っ……本当にずるいっ!お前だけ、僕は……僕だって……っ、」
泣きじゃくるアデレードの背中をひたすら撫でてあげていると、屋敷の入口の方が騒がしいことに気がついて僕は耳を澄ませた。
『〜〜!!』
聞き覚えのある声が僕のことを呼んでいる気がした。ふわりと遠くからでも分かる彼の香りに、僕は泣きたいような心を揺さぶられるような感覚を覚えて、ゆっくりとアデレードから身体を離した。
「アデレード」
「……っ、なんだよっ、まだ何かあるわけっ!」
「アデレードもきっと幸せになれるよ」
「なに、言ってんの」
彼がこの先どんな未来を辿るのかも、どうして行くのかも僕には分からないけれど、きっと幸せになってくれるって信じてる。
どんなに悪い事をした人にだってもう一度だけでも幸せになる機会が与えられても良いはずだって思うから。
「君の一番星を見つけて」
「……え…」
「きっと、見つかるから。いつだって君を見守って、大切にしてくれて、支えてくれる、自分だけの希望の星を探して」
僕はありったけの笑顔でアデレードにそう伝えた。
なんでもいい。
人でも物でも、なんでもいいから……。
君だけのたった一つの星を見つけて欲しい。
そうすればきっとどんなに辛い時でも立ち上がることが出来るから。
「僕は見つけたよ」
少しずつ近づいてくる足音を聴きながら、僕はひたすらに微笑む。
ふわりと甘やかで優しい香りが漂ってきて、ゆっくりとその香りのする方に身体ごと視線を向けると、綺麗な銀の髪を靡かせながら彼が僕に駆け寄ってきて、強く強く抱きしめてくれた。
「リュカっ!」
「アデルバード様……」
荒い息遣いから、必死に僕のことを探してくれていたんだと分かって申し訳なさと感謝の気持ちが溢れてくる。それと同時にどうしようもなく安堵してポロリと1つ涙を流すと、彼が僕を抱きしめながら、無事でよかったって呟いた。
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